「抗血栓薬って何?」「抗凝固薬って何?」問診の時に「この薬は抗血栓薬かな・・・?」
処置前に「この処置は、どのくらいの休薬期間が必要だったけ・・・?」「この抗凝固薬の休薬期間はいつから、いつまで?」と悩んでしまうことがあると思います
そんな疑問や問診時の注意点について、今回は詳しく解説していこうと思います
抗血栓薬ってなに?
- 抗血栓薬には、抗凝固薬と抗血小板の2つがあります
- 抗凝固薬は、静脈の血栓形成を防ぎ 心房細動 深部静脈血栓症の予防や治療として内服している
- 抗血小板薬は、動脈の血栓形成を防ぎ 狭心症・脳梗塞予防 冠動脈ステント挿入後に内服している
抗凝固薬を内服していると、出血しやすく・血が止まりにくい状態になります
抗凝固薬
一般名 | 商品名 |
---|---|
ワルファリンカリウム | ワーファリン・ワルファリンK |
ダビガトラン | プラザキサ |
エドキサバン | リクシアナ |
アピキサバン | エリキュース |
リバーロキサバン | イグザレルト |
抗凝固薬はワーファリンと直接経口抗凝固薬(DOAC)に分類されます
DOACは、ワーファリンと比べ薬物相互作用が少なく、食べ物に制限がありません
抗血小板薬
一般名 | 商品名 |
---|---|
アスピリン | バイアスピリン・アスピリン・バファリン81mg |
チクロピジン | パナルジン |
クロピドグレル | プラビックス |
シロスタゾール | プレタール・シロスタゾール |
ジピリダモール | ペルサンチン |
イコサペント酸エチル(EPA) | エパデール・イコサペント酸エチル |
リマプロストアルファデクス | オパルモン・プロレナール |
ベラプロストナトリウム | ルナー・プロサイリン・ケアロード |
トラピジル | ロコルナール |
ジラゼプ | コメリアン |
オメガ3脂肪酸エチル | ロトリガ |
オザグレルナトリウム | 注射用カタクロット・キサンボン |
一般名:薬の有効成分の名前です
商品名:製薬会社がつけた名前(登録商標)で、会社によって異なります
抗凝固薬を内服していると、出血のリスクが上がります
「観察だけだから・・・」と把握を怠ることのないようにしましょう
抗凝固薬の休薬期間
単剤投与の場合
通常検査 出血低危険度の内視鏡検査 出血高危険度の内視鏡検査 バイアスピリン/アスピリン 休薬不要 休薬不要 3−5日休薬 チエノピリジン系 休薬不要 休薬不要 5−7日休薬 チエノピリジン系以外の抗血小板薬 休薬不要 休薬不要 1日休薬 ワーファリン 休薬不要だが、INRの値を確認 休薬不要だが、INRの値を確認 ヘパリン置換 プラザキサ 休薬不要 休薬不要 ヘパリン置換 ※ワーファリンの場合は,PT-INR が通常の治療域であることの確認が必要
※チエノピリジン系:チクロピジン・クロビドグレル・プラスグレル
多剤併用の場合
2剤併用 3剤併用 バイアスピリン/アスピリン 休薬不要/シロスタゾール置換 休薬不要/シロスタゾール置換 チエノピリジン系 アスピリンと併用:5−7日休薬 アスピリン以外と併用:アスピリン・シロスタゾール置換 アスピリンと併用:5−7日休薬 アスピリン以外と併用:アスピリン・シロスタゾール置換 チエノピリジン系の抗血小板薬 1日休薬 1日休薬 ワーファリン ヘパリン置換 ヘパリン置換 ※生検・低危険度の内視鏡:症状に応じて慎重に対応
出血高危険度の内視鏡:休薬が可能となるまで延期が望ましい。投薬の変更は内視鏡に伴う一時的なものにとどめる
【通常消化器内視鏡】
上部消化管内視鏡(経鼻内視鏡を含む)
下部消化管内視鏡
超音波内視鏡
カプセル内視鏡
内視鏡的逆行性膵胆管造影内視鏡的粘膜生検(超音波内視鏡下穿刺吸引術を除く)
【出血低危険度の消化器内視鏡】
バルーン内視鏡
マーキング(クリップ,高周波,点墨,など)
消化管,膵管,胆管ステント留置法(事前の切開手技を伴わない)
内視鏡的乳頭バルーン拡張術
【出血高危険度の消化器内視鏡】
ポリペクトミー(ポリープ切除術)
内視鏡的粘膜切除術
内視鏡的粘膜下層剝離術
内視鏡的乳頭括約筋切開術
内視鏡的十二指腸乳頭切除術
超音波内視鏡下穿刺吸引術
経皮内視鏡的胃瘻造設術
内視鏡的食道・胃静脈瘤治療
内視鏡的消化管拡張術
内視鏡的粘膜焼灼術【参考資料】抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン 日本消化器内視鏡学会雑誌
覚えておくのは大変なので、いつでも見返せるようにファイリングしておくとよいです!
問診時の注意点
「なぜ、抗凝固薬を内服しているのか」「なんの薬剤なのか」「いつから休薬指示が出ているのか」「薬の再開はいつなのか」など、治療疾患・服用理由について確認しましょう
抗凝固薬を内服している患者が、内容を把握していない場合があります
他施設から処方されている場合もあるため、「お薬手帳」や電子カルテで「処方歴」の確認をしましょう
コメント